『ウォーハンマー』との出会い
80年代から90年代にかけて、僕は『T&T』の情報を得るために『ウォーロック』という雑誌を毎号買っていました。僧侶魔法や新版となる『ハイパーT&T』、ゲームブックの『ファイティングファンタジー』シリーズをTRPGにした『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』などはしっかりと遊ばせてもらいました。
そして91年でしたでしょうか、『ウォーロック』誌で紹介されたのが『ウォーハンマー』です。
『D&D』などに比べると実に泥臭い雰囲気のゲームで、紹介記事にワクワクしつつルールブックの発売を今か今かと待っていたのですが、基本ルールブック3冊が発売されてすぐに何と『ウォーロック』誌が廃刊になってしまいました!友野詳先生のリプレイはのちに文庫で発売されましたが、雑誌でのフォローがなくなってしまったのは非常に残念でした。
とは言え基本ルールブックはやたらと分厚い3分冊で、リプレイ2冊から得た情報もありましたのでセッションを行うには十分すぎるくらいの資料があったのですが、悲しいことに当時(高校生時代)の友人たちはモヒカンのドワーフに興味を示してはくれませんでした。
高校生時代の友人たちはアニメの『ロードス島戦記』などからTRPGに入ってきたので、『ウォーハンマー』の血と鉄と泥の臭いが充満した、狂気と隣り合わせの絶望感あふれる冒険に魅力を感じなかったようなのです。
それでも僕は無理やりゲーム開始を宣言し、セッションを行いました。一度でも遊べば全員がハマってくれると思っていたからです。基本ルールブックに掲載されていた「オールデンハラーの契約」という入門用シナリオを試しに遊んでみたのですが、残念ながら友人たちの心の琴線に触れることは出来なかったようで、僕が期待していた「俺もルールブックを買うよ!」とか「リプレイ読みたいから借りていい?」とかのセリフは引き出せませんでした。
戦闘時のクリティカルヒットで全員大爆笑はしてくれたんですけどね…。
頭部へのクリティカルヒットの効果の16番「敵の頭がランダムな方向へ切り飛ばされ、2D6メートル離れたところへ落ちる。」、とGMの僕が読み上げたところ「「「怖すぎるわ!!」」」と総ツッコミを食らいました。
『ウォーハンマー』の変遷
そんな訳で学生時代は一度しか遊べなかった『ウォーハンマー』ですが、社会人になってからリベンジする機会が訪れました。
2006年12月に我らがホビージャパン様から『ウォーハンマー第2版』が発売され、しかも次々とサプリメントが出版される確変状態に突入したのです!
2006年といえば『D&D3.5版』が日本で販売開始になった翌年ですが、『アルシャード』や『アリアンロッド』といった日本人デザイナーによる日本人ユーザーに向けたTRPGも円熟期に入っていた頃で、逆に言えば「世界の運命を左右するかっちょいい冒険」に少し慣れ過ぎていた頃でもありました。
そこで登場した『ウォーハンマー第2版』のインパクトはかなり大きく、「神の力に選ばれた戦士」とか「特別な力を持った超能力者」ではなく「ごく一般の市井の人々」から成りあがっていくゲームスタイルはとても魅力的でした。
「…命が軽いのがいいっすね。」と、友人がオールドワ-ルドの冒険者を評したとき、僕は我が意を得たりと膝を叩いたものです。
『ウォーハンマー』の魅力
『ウォーハンマー』のPCも他のゲームと同様に冒険者です。が、冒険者である前に社会人の一人として何かしらの職業に就いています。傭兵や賞金稼ぎなどは冒険者として成り立ちそうですが、物乞いやネズミ捕りといったパンチの効いた職業に就くことになると(最初の職業はランダムなのです)、社会の底辺からいかに這い上がるか、或いは社会の底辺をいかに楽しむか、他のゲームとは一味も二味も違ったロールプレイが広がります。
『ソード・ワールド』などにも生まれ表があって、例えば蛮族や貴族といった出自を決めることが出来ます。しかしゲームの開始時点でPC達は冒険者ギルドに所属する冒険者で、身分が保証されていることがほとんどです。
『ウォーハンマー』の冒険者たちは、真っ当に生きている町の人々からは胡散臭いと思われています。もちろん冒険者ギルドのように身分を保証したり仕事を斡旋してくれる機関はありません。PC達に仕事を頼んでくるNPCは、基本的にPCを捨て駒か金の亡者と考えて話しかけてきます。
PC達は買い物ひとつするのにも「世間話」の判定に成功しなければなりません。田舎に出向いた場合は買い物は諦めます。魔女狩りが横行している世界観なので、魔術や犯罪に関わるPCは常に正体を隠して行動します。さもないと魔狩人や狂信者に火あぶりにされかねません。
『ウォーハンマー』のPCは「運命点」という、直接的な死を回避できる特別な力を持っています(やったね!)。しかし運命点は有限なので、指や目の欠損、精神障害などは甘んじて受け入れることがほとんどで、冒険を重ねる毎に外見も内面もおかしくなっていきます。混沌変異という怪物化もよくある話です。
『ウォーハンマー』のPCは確かに強くはなるのです。ただ、特別な英雄的存在になるのは至難の業です。経験を積んで強くたくましくなっても、姑息でせこい慎重で堅実な生き方が求められます。
僕がGMを務めたキャンペーンのPCは、チンピラと大道芸人と民兵の組み合わせでした。実に生き汚いノリノリのロールプレイが多く、僕は大いに楽しめました!
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