『T&T』との出逢い
『D&D』とほぼ同時期に登場したTRPGに『トンネルズ&トロールズ(通称T&T)』というゲームがあります。名前を見て分かるとおり『D&D』を大いに意識しているゲームなんですが、意識の仕方に悪意があるというか何というか…
『D&D』を人当たりの良いエリートの優等生としたら、『T&T』はどこか憎めない叩き上げの天才肌といった感じでしょうか(個人の感想です)。
例えば魔法の名称も、『D&D』は「ファイヤーボール」「ライトニングボルト」といったかっちょいい感じなのに対して、『T&T』は「これでもくらえ!」「小さいことはいいことだ」といったコミカルなネーミングセンスを発揮しています。
そんな『T&T』を僕が初めて遊んだのは『D&D』の赤箱を買うよりも少し前のことです。友達と一緒に遊ぶTRPGとしてではなく、一人で遊ぶゲームブックとして『T&T』と出会いました。
『恐怖の街』というタイトルのソロアドベンチャーを本屋で見つけ、『火吹山の魔法使い』などと同じゲームブックの一種と思っていました。『火吹山の魔法使い』に比べると、自分のキャラクターの能力値の数が多かったり、武器防具を選択して購入する必要があったり、これは大人向けだなとワクワクしながらキャラクターを作成しました。
一般のゲームブックと違い、自分のキャラクターに自分で名前を付けるのもTRPG由来の様式でしたが、当時の僕はまだ中学生になったばかり、ドラクエで遊ぶ際も勇者には自分の名前を付けていたので、『恐怖の街』のキャラクターシートにも自分の名前を漢字で書き込みました。それを見た兄との会話をいまでも覚えています。
兄「そういうのはカタカナの名前にしろよ。」
僕「そうなの?(自分の名前をカタカナで書き直す)」
兄「そうじゃなくて、もっと外国人みたいな名前を考えるの!」
僕「そうなの?でも見本も漢字の名前だよ。」
兄「うそつけ。そんなわけないだろ。」
僕「ホントだよ。ほらここ、“無敵の万太郎”ってなってる。」
兄「……。」
そのまま自分の名前をカタカナにして遊びましたが、『恐怖の街』は結局クリアできませんでした。
それから1年ほど経って、TRPGとしての『T&T』と改めて出逢い、『D&D』とはまた違った魅力にどっぷりとハマることになります。
『T&T』の特徴
『T&T』の特徴は、何と言ってもその豪快さにあります。
ほとんどのTRPGの戦闘は、攻撃の命中判定、ダメージの決定といった複数の工程をキャラクターごとに重ねていきますが、『T&T』は違います。戦闘の参加者全員が一斉にダメージ決定のサイコロを振り、味方陣営と敵陣営の合計を比べあうという実にシンプルなルールなのです。
そのシンプルさを土台にして、魔法や飛び道具、毒物、狂戦士化(バーサーク)といった戦闘オプションがあって、戦闘が非常に楽しいゲームでした。
自分達だけのハウスルールですが、PC側のヒットロールがピッタリ100点ならその時点で戦闘勝利とか、敵の鎧が壊れて防護点がなくなるとか、その場のノリで出鱈目な演出を入れたりして遊んでいました。
それから、『D&D』には無かった(曖昧だった)「通常行為判定」のルールがデザインされていたのもゲームの幅を広げていたと思います。今では当たり前の「能力値+2D6の数値が目標値以上なら行動に成功」というルールのおかげで、ダンジョン以外の物語作りに目が向いていきました。
さらに「通常行為判定」では、サイコロを振るたびに経験点をもらえるシステムでしたので、そもそもサイコロを振るのが楽しくて楽しくて、戦闘前に無駄に交渉したり、有利なポジションを取ろうとしたり、GMもプレイヤーもアドリブが鍛えられました。
『T&T』のいま
『T&T』は登場時から根強い人気を維持していて、『ハイパーT&T』『T&T完全版』とバージョンを変えて(出版元も変わって)いまもTRPGユーザーに遊ばれています。
僕もたまに『T&T完全版』のGMをするのですが、プレイヤー達が豪快に10~20個のダイスを転がしているのを見ると「これぞT&Tだよなあ。」と感慨深くなるものです。
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