『ソード・ワールド』の第一印象
僕がプレイヤーとして初めて遊んだTRPGは『ソード・ワールド』です。中学2年生の夏に近い頃だったと思いますが、それまで『D&D』三昧だった僕たちの前に日本製のゲームが現れたわけです。
『ロードス島戦記』はもちろん読んでいて好きだったのですが、同じフォーセリアを背景世界にした『ソード・ワールド』の第一印象は実はあまり良いものではありませんでした。
GMを務めてくれた友人に説明を受けながら、人生初のPCを作成する作業はすごく楽しくワクワクしたのですが、いざセッションに入るとスムーズに進行せず楽しめませんでした。これはGM含め参加者全員のルールへの理解不足が原因だったのですが、このたった1回の失敗のせいで「やっぱり日本産はダメだよな~」という実に中学生らしい浅はかな結論に達してしまい、次に『ソード・ワールド』を遊ぶまで1年近く空くことになりました。
ほぼ同時期に出た『ロードス島戦記RPGコンパニオン』の方は、PCの能力値がパーセンテージでの表記だったため直感的に理解しやすく、『D&D』『T&T』『ロードス島戦記』の三ゲームが僕と友人たちのスタンダードになりました。
『ソード・ワールド』とリプレイ
『ソード・ワールド』に再び目を向けるようになったのはリプレイが発売されてからです。
『盗賊たちの狂詩曲』というタイトルのリプレイ第1巻を本屋で見かけたとき、草彅琢仁先生のイラストが凄く魅力的で『ソード・ワールド』の関連本であることはあまり意識せずに買ってしまいました。
さらに一晩で読み終えてその面白さに感動した僕は、翌日には学校に持っていき友人たちに薦めていました。
『ロードス島戦記』のリプレイは時折『コンプティーク』で立ち読みしていましたが、先に触れたのが小説だったせいかイメージとの乖離があって、僕は読み物としてはあまり楽しめていませんでした(出渕裕先生のイラストは毎回楽しみでしたが…)。でも『盗賊たちの狂詩曲』は読み物としてばっちり面白かったのです。
山本弘先生の文章はあまり嘘っぽくなく、生き生きと遊んでいる様子が伝わってきて繰り返し何度も読み返しました。続刊の『モンスターたちの交響曲』『終わりなき即興曲』ももちろん発売されたら即購入し、『ソード・ワールド』のルールの把握と面白さの確認に活かされました。
解説部分は基本的にGMの目線ですが、『終わりなき即興曲』の最後に収録された座談会ではプレイヤー側の感想もしっかり書かれていて、その頃の僕はGMをする方が多かったのでとても参考になりました。
プレイヤーそれぞれで面白いと感じる部分が違うんだな~、「親しき中にも礼儀あり」は絶対的な真実だよな~、などと『ソード・ワールド』のリプレイを読みながら思ったものです。
また、それまではダンジョンに潜って帰ってくるだけのシナリオばかり遊んでましたが、物語を意識するようになったのもリプレイのおかげです。PCに納得できる明確な目的を与えること、シナリオにゴールがあること、そういったことを考えるようになりました。
PCの死についても認識が変わりました。『D&D』も『T&T』もルール通りに遊ぶと(とりわけ低レベルの頃は)PCがよくHP0になりますが、ドラクエなどのコンピューターRPGの影響下にあった僕と友人たちは、教会でお金を払えば生き返ることが当然と考えていました。
PCの誰かが死亡しても全滅さえしなければ問題なしと思って、理不尽な罠で死亡してもゲラゲラと笑って受け入れていました。
ところが『ソード・ワールド』の(幡池裕行先生のイラストが最高にカッコ良かった)リプレイ第二部においてPC二名が倒されて退場する流れを目の当たりにして、そのシビアなルーリングの方がかっこいいのではないだろうかと心を改め、GMは理不尽な罠やモンスターの配置を控え、プレイヤーも無茶苦茶な行動を控えるようになっていきました。
その結果、1シナリオに費やす時間を把握しやすくなっていきました。かつては罠を設置したくて1本道の通路に扉を10個配置したりしたこともあったのですが、そのような理不尽さに面白味を感じなくなっていったからです。また、プレイヤー側の何らかのアドリブでやり込めなければ倒せないような不適切なモンスターを登場させることもなくなりましたから、ゲームのスピードアップは当然でした。
『ソード・ワールド』と2D6
6面体のダイス2個しか使わないことも『ソード・ワールド』の第一印象が良くなかった理由の一つです。
『D&D』では、命中判定や抵抗判定に20面体、HPの決定やダメージ決定に4、6、8、10面体、盗賊の行為判定にD100によるパーセンテージロールと複数種類のダイスを使用します。
『T&T』では、戦闘時に6面体を10個とか15個とかドバっと振ります。行為判定は2D6ですが、ゾロ目が出たらさらに2D6を振り足すという非常に豪快なルールです(6分の1で振り足し発生なのです!)。
ですから『D&D』『T&T』はダイスを振る行為そのものが楽しいゲームでした。一方で『ソード・ワールド』は行為判定もダメージ決定も2D6のみで結果を算定します。これが初見の際には味気ないというか物足りないというか、不満を感じてしまいました。
しかしリプレイをよく読み、自分達でも繰り返し遊んでみて、2D6の確率分布がいかにゲーム向きで納得しやすいものか体感しました。行為判定は6ゾロで完全成功ですが、これは36分の1の確率なので約2.8%です。ダメージ決定の2D6では、武器にもよりますが10以上(シーフなら9以上)でクリティカルが発生しますので約16.7%(約27.8%)です。
ゲームデザイナーである清松みゆき先生の数字に対する非凡なバランス感覚が、しっかりと反映された作りになっていたわけです。
ルール自体はシンプルでありながら様々な状況を表現しやすい『ソード・ワールド』はその後、日本で最も遊ばれるTRPGへと発展して行き、さらに後継のゲームにも大いに影響を与えていくことになります。
僕の高校生時代、大学生時代においても一番遊んだTRPGは間違いなく『ソード・ワールド』です!
いまでは2D6が大好きなんです(笑)
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