『D&D』の思い出

『D&D』との出逢い

世界で最初のPRGとして知られる『ダンジョンズ&ドラゴンズ(通称D&D)』は1974年にアメリカで販売されてヒットし、日本語版は1985年に販売開始となりました。

僕が『D&D』を知ったのは中学1年生の頃で、「D&Dっていう面白いゲームがある。」と2歳上の兄に教わったのがきっかけです。

しかし、中学1年生の僕に中学3年生の兄がいくら言葉で説明しても『D&D』がどういったゲームなのかは全くと言っていいほど伝わっていませんでした(笑)

「ダンジョンマスターとプレイヤーに分かれて遊ぶ。」「ダイスを振って判定する。」などと説明されても、僕としてはそもそもそれらの単語が何なのかピンと来なくて(ファミコン以外のなにかで、ドラクエのようなゲームをしているんだろな。)くらいの認識で、あとは聞き流していました。

それから少しして、たまたま本屋で見かけたのが『ドラゴンランス戦記』の第1巻。

『ドラゴンランス戦記』は『D&D』をバージョンアップさせた『AD&D』を基にしたゲーム小説なんですが、その表紙のイラストに僕は一目で魅了されてしまったのです。

「これが兄ちゃんの言ってたD&Dってやつか!」

表紙裏のキャラクター紹介を読んで(少し難しそうだな…)と思いつつ財布と相談し購入。あまりの面白さに既刊の第3巻まですぐに購入しました。

『ドラゴンランス』にハマった僕は当然『D&D』も購入して遊ぶつもりになっていたのですが、値段がたしか4,800円で、当時の中学生には少しお高いシロモノでした。

『D&D』の遊び方

お年玉の残りを握りしめ、ボードゲームなどを置いてあった大きめのデパートまで自転車を走らせ、赤い箱の『D&Dベーシックルールセット』を買った時の興奮と喜びは今でもよく覚えています。しかし、友達3人と一緒に行き、買ったその日に遊ぶつもりだった僕ですが、いざ封を開けてみて驚きました。中に入っていたのは薄い雑誌サイズの本が2冊と、6種類の変わった形のサイコロのみだったのです。

友達にはいったんファミコンで時間を潰してもらい、僕はルールブックを読んでみました。1時間くらいでしょうか、その日は『D&D』で遊ぶのを諦めました…。

友達には兄に教えてもらってからと言いつつ、受験生の兄に詳しく聞きこむのも気が引け(4面体ダイスの見方は教わりましたが)、自力で何とかしようとルールブックを眺める日々が続きましたが、遊び方のイメージが全くつかめませんでした。

そんな状況を変えてくれたのは、またまた本屋での出会いです。『ドラゴンランス戦記』を出版していた富士見書房から『D&Dがよくわかる本』という解説本が出たのです。

これが実によくできた解説本で、特に失敗例と成功例のリプレイを読んだことで、ようやくTRPGというジャンルを理解できました。

『D&D』のすごいところ

中学2年生の1学期は、ほぼほぼ毎日『D&D』を遊んでいました。DM(ダンジョンマスター)を勤めるのはルールブックを持っている僕の役目で、授業中にせっせとダンジョンを作成していました(笑)

この頃は物語らしい物語はほとんど考え出せず、まずはダンジョンを作り、それからそのダンジョンに挑む何か適当な理由を考えていたのですが、いま思い返すと顔が赤くなるようなシナリオばかりです。

「怪物退治に向かって戻らない騎士の救出」とか「邪悪な魔法使いの研究を調査する」とかならまだ良かったのですが、「謎の吟遊詩人に君たちが行かないと世界が滅びると言われたから」とか「何かすごいお宝があるらしいから」とか、実にふわっとした理由でPC達は毎回ダンジョンに潜ってくれていました。

それでも飽きずに楽しめたのは、やはり『D&D』というゲーム自体がそれだけ魅力的な構造を宿していたからでしょうね。

20面体ダイスを転がして、攻撃が当たったかどうかを判定する。

どの程度のダメージを与えられるのかを、8面体ダイスを転がして判定する。

隠された罠が見つかるかどうか。

魔法の呪文に耐えられるかどうか。

様々な状況を「ダイスの目で判定する」ということが、兎にも角にも楽しくて仕方がなかったのです。友達全員で各自のダイス目の良し悪しに一喜一憂して騒いでいました。

それから、参加者一人一人がそれぞれ違う役割を受け持つということも新鮮で面白い部分でした。

白兵戦を受け持つファイター、アンデッドモンスターに強く回復役のクレリック、罠の発見や解除ができるシーフ、たくさんの呪文で状況を変化させられるマジックユーザー、さらに中間的な役割を担えるエルフ、ドワーフ、ハーフリング。

参加者全員に明確な長所が与えられるので、それが発揮される状況が来ると「俺の見せ場が来た!」という感じで楽しいんですよね。そしてプレイヤー達が楽しそうにしていると、DMの自分が褒められているような気分になって自己肯定感の醸成に役立ったかもしれません。

親からは良く「同じゲームを繰り返し遊んで面白いの?」と不思議がられましたが、繰り返し遊んでも飽きない面白さがTRPGにはあると、『D&D』で確信していました。

中学生の頃に『D&D』と出会って、それが一生涯の趣味に繋がっていったことは僕の人生にとって大いなる幸運だったと思います。

『D&D』で得たもの

当時の僕には『ドラゴンランス戦記』のような壮大で劇的なキャンペーンは作ることが出来ませんでしたが、仲間達と何度も何度も笑いあったことは本当に良い思い出です。

『D&D』にのめり込み過ぎて両親や学校の先生に心配されたこともありましたが、いまにして思うのは夢中になれるものがあって楽しい学生生活だったということ。

もちろん学校は楽しいことばかりではなかったのですが、『D&D』のおかげで乗り切れた部分も僕の場合は多分にあると思います。

また、『D&D』に活かせないかと『ドラゴンランス戦記』の他にもたくさんの小説を読むようになりました。『指輪物語』『ゲド戦記』『エルリックサーガ』などの海外作品から始まり、推理小説や時代小説も読んで、多少なりとも知識の幅が広がった気がします。そのおかげかどうか、高校生時代は国語の成績が良かったです(笑)

サイコロ好き
サイコロ好き

ついでに言うと数学Ⅲの確率も高得点でした!

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